ケラメイコス 〜 陶工の町 25
酒を呑む器−14〜「のぞき」と呼ばれる器

 私の趣味は「のぞき」を集めることですと云うと怪訝な顔をされるのではないでしょうか。どこかの大学の先生をはじめ、新聞には「のぞき」云々の記事がよく顔を覗かせています。私の趣味としての「のぞき」はちょっと違って「のぞき」と呼ばれる一群のやきもの達のことを指しています。そば猪口ほど数もバラエティ−さもなく、使い道も乏しいため肩身の狭い思いをしていることと思います。もともとは一人ひとりに配膳される食膳の中に酢や醤油などの調味料が入れられていた器です。今では、ぐい呑の代用として使われるぐらいかもしれません。そうは云っても日本酒は陶器のぐい呑が一番。冷酒であれば「のぞき」の出番もあるでしょうが、手で握り締めるという感覚がないので今ひとつくつろいでお酒が楽しめないようなところがあります。個人的には、ウイスキ−、それも癖の強いシングルモルトを呑むのに最も適していると感じています。アルコ−ルが弱いくせに水割りやロックではなく、ストレ−トで一口で飲んでしまうので注げる分量的にも、香りを楽しむにもその機能を発揮してくれます。特に、「のぞき」の中でも少し上部が絞られたものは、飲み干したあとも器に香りがよく残り、何時までも残り香が楽しめます。ちなみに癖の強いシングルモルトといえば、アイラ島のラフロイグやラガブ−リンまたスカイ島のタリスカ−などが最高の相性を見せてくれます。
 骨董屋さんを覗いても、ヤフ−のオ−クションを見てもそば猪口は掃いて捨てるほどありますが、「のぞき」は数えるほどしかありませんし、気に入ったものとなると数ヶ月に一度出ればいい程度ですが、その都度ため息をつきながら経過観察することになってしまいます。そうした中から遊びに来てくれた染付のものを紹介します。
 左端のものは「のぞき」では定番のようになっている蛸唐草と呼ばれるものです。かなり大振りで、絵付けも文句のつけようがありませんが、残念なことに二つに割れたものを銀継してあります。直しがなかったらとても手が出ませんが、ヤフオクの楽しいところはこうしたものが出てくることかもしれません。
 真ん中は、これも定番の花唐草。細身の「覗き」で、口縁のホツを金直しして有ります。唐草が少しぼけているのが難点です。これは傷のあるものを落札し、漆芸家に修理してもらったものです。完品を買おうと思えば本当に手が出ないくらいの価格になってしまいます。壊れ物ですから傷がつくのは当たり前で、自分で直せば済むことと思いながらも修理待ちのものが数点鎮座しています。いいものはプロに直しをお願いしなければなりませんが、この直し自体が芸術品と思えるぐらいいい雰囲気をかもし出してくれます。
 右端は、競争相手も無く手に入った我がコレクションでは珍しい無傷の「のぞき」です。少し呉須の色が薄いため競争相手が無かったのかもしれません。この柄のものはそば猪口ではよく見るようですが、「のぞき」ではあまり見ないように思います。飾っておくのなら濃い色合いのほうがいいでしょうが、この程度の淡さのほうが自己主張も少なく使うのにはいいように思います。コレクタ−の世界は不思議なもので三点の中でこれが一番安く落札できました。

蛸唐草文のぞき 花から草文のぞき 暦文のぞき
蛸唐草文のぞき
W5.5×H6.5
花から草文のぞき
W5.2×H6.0
暦文のぞき
W5.4×H5.8