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ケラメイコス 〜 陶工の町 23
酒を呑む器−10〜赤い色の器

 ぐい呑を、青、黒、白、黄と色別に診てきていますが、いざ自分が持っているものの中から選ぶとなるとなかなか難しい面があり、前回の黄色で終わりかなあと思っていたら赤い色を思い浮かべました。皆様は赤い色のぐい呑とはどんなものを思い浮かべられますか。赤い釉薬のかかったものでしょうか。関心を持っている作家の一人に越前陶芸村にいる山田和がいます。志野と織部を中心に発表していますが、最近、赤い釉薬を器面ぶちかけた織部を焼いています。白っぽい胎土の上に鮮やかな赤い色が飛び散っており、斬新なものとは思いながらも、血まみれの器をイメ−ジしてしまい触手をまだ伸ばしてはいません。これは例外として、やきものの赤い色には素晴らしいものがあります。赤く発色する釉薬に銅を主成分としたものがあります。化学の勉強になりますが、10円玉を見ていただければ分かるように銅のもともとの色は赤ですし、錆びれば(酸化)緑青を吹き緑色になります。鉄の場合は錆びれば赤くなります。これらを釉薬に調合し、窯の中に空気をどんどん送り込んで焼成すれば釉薬中の銅や鉄が酸化して、緑や赤に、空気の供給を抑えた状態で焼成すれば本来の色に還元され赤や黒になってしまいます。そうはいっても釉薬の中にどの程度入れるかによって発色は異なってきます。微量な鉄分で空気の供給を抑えれば青磁になります。志野焼に見られる赤い色も鉄分によってもたらされる色です。釉薬を使うものでは、元の時代に造られた透明釉の下に銅で赤く発色させる釉裏紅と呼ばれるものがありますが、これ以降、いいものは出来ていない状態です。わが国では、戦前、有田の松本佩山が素晴らしいものを焼成しています。これに挑戦する作家は少ないのですが、嬉野で一位窯を開いている田中一晃が挑戦しています。価格も安く、誰にでも好まれる食器も造っていますので近くに行かれたときは足を伸ばしてみてください。

 一方、こうした釉薬によらず、胎土に含まれる微量の鉄分により赤い色を発色させるものもあります。やきものの世界では、こうした発色による赤色を火色と呼んでいます。いい言葉ですね。窯の神様が火の色を器肌に焼き付けたものです。自在にコントロ−ルできるものでもないと思います。信楽や備前などの釉薬を掛けない無釉焼締を行う窯で見ることができます。ただ、備前には緋だすきと呼ばれる白い地肌に鮮烈な赤い色を出す技法がありますが、これは藁を器肌に巻きつけることにより発色させるものです。鮮やかな気持ちのいい赤い色といえます。

 左の写真は、信楽焼です。これを造った作家は「溶岩を目の前に置いたものを目指している」といわれていましたが、まさにそんな感じがします。飛んできた灰がかかったところは黄緑色の釉薬となり、またガラス質の深い緑色になっています。窯の中の炎の激しさをよくあらわしているといえます。信楽の作家は押しなべてことさらにへら目を入れたり、切り刻んだり、これでもかというほど焼きこんだものを造りたがりますが、このぐい呑のようにおとなしい中にも内から湧き出てくる力強さを感じさせ、毎日使っても飽きないものを探していますが、なかなか出会いません。真ん中は、備前の緋だすきです。壷などの中に入れて灰がかからないようにして焼成します。赤と白のコントラストが目を楽しませてくれます。右端も備前焼で、室町時代の50Mを超える大窯に挑戦している作家のものです。さすがに大振りで、ゆったりと構えており、おだやかな火色が全面を覆い、大酒のみにはのんびりとお酒が楽しめそうな器です。志野の赤い器として原さんのぐい呑があります。彼の作品は、うちに秘めた燃えたぎるような気迫とは違い、前号の黄瀬戸と同じようにすべて穏やかな作品に仕上がっています。「えくれしあ第22号」又はHPの美術館をご覧ください。

信楽 緋だすき 備前
信楽紐ぐい呑 杉本貞光
備前緋だすきぐい呑 小山末広
備前ぐい呑 森陶岳