ケラメイコス 〜 陶工の町 19

酒を呑む器−8〜白い器−4



 白い酒を呑む器の最後に、唐津焼の中の斑唐津を紹介します。

 斑唐津の釉薬は萩焼や高取焼にもみられる藁灰を主成分としたもので、従来、朝鮮の会寧地方の影響と考えられていましたが、最近中里逢庵(十三代太郎右衛門)さんの本を読んでいたら釉薬の厚みとの関係から斑唐津の源流は朝鮮よりも中国の鈞窯の影響の方が強いのではないかと書かれていました。朝鮮の技術も鈞窯の影響下にあったでしょうし、唐津は中国との貿易港であったことから東アジア圏の技術取込の窓口であったといえます。

 斑唐津と一口に云ってもいろいろな色調があります。柿右衛門の濁し手とは違いますが、乳白色に上がったものや黄色っぽく上がったもの。中には全面ブル−に発色したものもありますし、小さなブル−の斑点が所々に現れるものもあります。このブル−の斑点が酒の中でゆらゆら揺れる様子にはなかなかいいものがあります。これは鉄分の影響なのでしょうか。以前、西岡先生が、「最近青っぽく上がるのは、薪に釘が沢山刺さっているからかなあ。」と話されているのを聞いたことがあります。かなり昔ですが、陶芸雑誌に、藤ノ木土平さんの真っ青な壷だったか、徳利だったかが、砂浜で波に洗われている写真をみたことがあります。こうしたものが取れるのは窯の神様の気まぐれだろうと思います。陶器には、必ずしも計算どおりにはいかない面があり、窯を開けて初めてこんなものが取れたというという面白さがあります。ということは、足繁く通よっておかないと良いものを手に入れることが出来ないとので、「また唐津に行こう。」となってしまいます。

 下の写真の左は、祖父の集めたもので、おそらく戦前か戦後当たりのものと考えています。穏やかで、端正な雰囲気を持っています。最近の斑唐津は農薬の影響からか、古いものと比べるとだいぶ違ってきており、現在の斑唐津の中にこうした調子のものを見つけることはまずないのではないかと思います。

 中央のものは柔らかい乳白色に上がり、一部にピンクの窯変もみられるものです。こうした柔らかい釉調のものは窯の中の特定の場所でしか取れないもののようです。西岡先生の斑唐津では一番いいものの部類に属するものといえます。まず、この手のものは表の陳列室には出てくることがないのですが、たまたま持ってこられていたところに幸運にもでっくわしました。

 右のものは、湯のみのような形をした大振りなもので、全面黄色っぽい窯変を見せています。これは、藤ノ木土平さんが、窯焚きの時、窯の神様に供えるお神酒を入れていたもので、窯の上に置いてあるのをいただいてきました。不思議なもので行く先々でいろいろいただくことがありますが、買ったものよりこちらの方にいいものが沢山あります。

斑唐津1 斑唐津2 斑唐津3
斑唐津ぐい呑 作者時代不詳
斑唐津ぐい呑 西岡小十
斑唐津ぐい呑 藤ノ木土平