ケラメイコス 〜 陶工の町 P 酒を呑む器−5〜白い器−1

   前回までは、鉄を呈色材とする青磁や天目といわれる種類の器を取り上げました。青磁と天目の中間当たりの柿釉と呼ばれる茶色のものもあります。これらは、いかに鉄の化学変化を生かしていくかという作業になりますが、白い器でも白磁となれば、こんどは逆にこの鉄をどうすれば完全に除くことができるかという問題に直面します。青磁は釉薬が発見されたときから存在していたといえますが、これをコントロ−ルして中国の越州窯や耀州窯などの緑の青磁となって行きました。白磁が焼かれだしたのは唐の時代で、最高の白磁とされる定窯は宋の時代となります。しかし、これは焼成の加減からわずかな黄色身を帯びていますし、涙痕と呼ばれる流れが見られます。本来の白磁、曇りも無い真っ白な白磁は、もう少し時代が下がり、景徳鎮のペイトンツと呼ばれる石の発見を待たねばならなかったと思います。ご飯茶碗などの有田の磁器を見ていただければお分かりと思います。もし、黒い斑点があればそれは精製不良で鉄分が噴出したものです。柿右衛門さんの本を読んでいたら、こうした斑点を隠すために、可能であれば鳥を飛ばして隠すと書かれていました。こうした白磁の釉薬の上にに絵を描いたものが色絵磁器であり、釉薬の下に、呉須で青い絵を描いたものが染付、銅で赤い発色をさせたものが釉裏紅と呼ばれています。

 白磁とは別系統のものに、陶土の上に白泥をかけて白い肌を見せるものがあります。粉引きと呼ばれるものです。白磁と比べて柔らかな味わいを見せてくれるものですが、使っているうちに天井の雨漏りや水に濡れた布などに染みが出るように茶色やピンクの染みがどんどん入ってきます。やきもの好きはこれが楽しみなのですが、最近は、変化しない粉引きが作られています。理由は、不良品として苦情が来るからだとのことでした。

 やきもの好きは、磁器か、陶器かに分かれるようですが、陶器好きは、やきものの傷にもあまり頓着せず、金継、呼継、共直しや蒔絵直を景色として楽しみますが、磁器の愛好者は無傷のもの以外は見向きもしない傾向があるようです。しっかりと直されたものは非常に美しいところがあります。そのものが本来持つ美しさ、直しの美しさそしてそれらが一体となった美しさと・・。陶器も硬く焼き締められているようでも長年使っているうちに変化してきます。古い名品とよばれる茶碗を見られる機会があると思いますが、最初はテカテカしたものだったと思います。土平さんから、簡単に変化するものでは100年も持たない。焼ききってテカテカしているものでないとダメだといわれたことがあり、このとき初めて造る側と売る側の意識の違いに気づかされました。

 下に上げたのは、左から、中国では宋の時代ごろの内蒙古から出土した白磁のぐい呑ですが、普通見られる磁器とは違って、磁器の上に白磁釉を厚くかけています。次の二つは、粉引きのぐい呑で黒い胎土に白泥が掛けられています。もともとは真っ白だったのですが、使っているうちに写真のように、染みが出てきます。このように変化が出てくるのが粉引きの面白さといえます。



白磁酒盃 中里隆 藤ノ木土平
中国 宋時代 白磁酒盃
中里隆 粉引ぐい呑
藤ノ木土平 粉引ぐい呑