ケラメイコス 〜 陶工の町 P 酒を呑む器−4〜黒い器

 前回までは、青磁についてみてきましたが、今回は、青磁と同じように鉄を呈色材とする黒い酒器についてみていきます。青磁の色を出すのは釉薬の中に含まれる2%程度の微量な鉄の作用によりますが、これが増加するに従い飴色に変わり、8%程度にまで鉄の分量が増えれば、あの美しい青磁の色から真っ黒い色に変わってしまいます。お茶をされる方は、黒といえば、楽の黒茶碗、瀬戸黒の茶碗や天目茶碗をすぐに思い起こされるでしょうし、最近の焼酎ブ−ムで黒薩摩のチョカを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。私自身、黒いやきものといえば、「小原木」や「武悪」と名付けられた瀬戸黒の茶碗、また大阪の東洋陶磁美術館蔵の国宝の「油滴天目茶碗」や京都国立博物館の「蓼冷汁天目茶碗」ということになります。そして、酒を呑むとなれば、中国の宋の時代の天目茶碗を小さくしたぐい呑と言う事になります。最近は、備前の作家で、黒っぽい備前焼を焼く人が散見されます。どのような釉薬を使っているのか分かりませんが、従来の備前焼にはない魅力を感じますが、ぐい呑ではなかなか良いものをみません。

 宋の時代のものといえば、建盞と呼ばれる建窯で焼かれたものが一番いいのでしょうがなかなか手に入りません。たまたま写真の中央にあげた、ぐい呑が手に入り楽しんでいます。これは「海揚り」と呼ばれる沈没船から引き上げられたもので、1994年にMOA美術館で開催された「唐物天目展」の図録に福建省定海湾引揚として瓜二つのものが掲載されています。柔らか味のある白い素地にやさしい光沢のある釉薬がかかり、口当たりもよく、ゆったりした感じのお酒が楽しめます。

 左端は、青磁の第一人者川瀬忍先生の作品で、青磁と同様非常に薄手でしっかり造りこまれた作品です。楽風の黒いぐい呑ですが、緊張感を感じさせられます。手取りが非常に軽くおいしくお酒が飲めると思いますが、まだ、使わないまましまいこんでいます。

 右端の徳利は唐津・隆太窯の中里隆先生のものです。先生の風貌、人柄そのもののゆったりした徳利です。呼継でもされた唐津のぐい呑あたりと併せれば最高かと思います。

 黒い色は写真にとるのが難しく、釉薬の色合い、調子等表現できないのが残念です。川瀬忍先生のは固い感じの黒色で、ちょっとおしゃれな感じの雰囲気に良いでしょうし、残りのものは仲間内で賑やかな場合がいいかなと思います。好きな器を広げて賑やかに一杯やりたいですね。そのような企画があれば仲間に入れてください。

 この記事を書いている最中に、宋の時代だという天目茶碗を手に入れました。発掘品とのことで、しかも、10年近く売れ残っていた汚いものでしたが、極端に安かったので勉強材料のつもりで買ってみました。黄土がこびりついており、台所用の金属製たわしや研磨剤のジフで洗ったら非常にきれいな油滴天目茶碗に変身しました。自然光で見る油滴の美しさにびっくりしています。手元に置かないとそのものの良さは分からないことを実感しました。HPに載せてみましたが、薄汚い茶碗にしか見えないのが残念です。

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