ピロリ菌の話題

東雲クリニック 竹岡秀生


 少し前になりますが、テレビでピロリ菌をパロディーにした“コント”をやっていました。舞台は胃の内部・・そこにいるのは、志○けん扮するピロリ菌、・・それをやっつける(除菌する?)コントでした。こんなにまで有名になったでピロリ菌!!・・今日はこのピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍についての話題です。
 かなり以前、受付嬢の会話で「え?ピロリン? 名前が可愛い〜♪」という声も聞かれました。しかし、内容を知ると、あまり馬鹿に出来ない菌であることが、理解いただけると思います。ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター ピロリ」と言います。名前の由来は、ヘリコ=らせん型、バクタ=細菌、ピロリ=最初の発見部位の胃幽門部(ピロルス)によります。ピロリ菌は、胃の粘膜の表層と粘液に巣食い、胃にさまざまな障害を起こす「悪い菌」なのです。決して「ピロリンちゃん」などといった「可愛い〜♪」?ものではありません!!
 先進国に比べ発展途上国で感染率が高く、わが国は両者の中間で、若年者に比べ高齢者に感染率が高く、主に乳幼児期の感染や戦後の混乱期の感染がいわれています。感染経路は、水系感染・経口感染とされていますが、全てが解明されている訳ではありません。胃に感染すると胃炎を引き起こし(胃炎の概念は、この1〜2年の間に大きく様変わりしています。)、胃・十二指腸潰瘍の原因になり、さらに胃がん、胃リンパ腫、消化器以外のいくつかの疾患についても関連性が示唆されています。

 ピロリ菌の感染を調べる方法は?:
 大きく分けて、内視鏡を使用した検査と使用しない検査がありますが、内視鏡を使用した検査では、@内視鏡で採取した組織から菌を培養、A顕微鏡で見る方法、Bピロリ菌が持つウレアーゼ活性から菌の存在を調べる方法などを調べる方法などがあります。また内視鏡を使用しない検査では、@無害のアイソトープを使用し、呼気から胃内のウレアーゼ活性を測定する尿素呼気試験やA血液や尿中の抗体を検査、B便中抗原検査などがあります。それぞれの検査には、その特性や有用性があります。
 ピロリ菌の検査は医療保険でも適応となっていますが、検査や治療は、X線検査や内視鏡検査で胃・十二指腸潰瘍の診断が確定されていることが前提になっています。
 胃・十二指腸潰瘍はピロリ菌が原因である事が多いと考えられますが、全てという訳ではありません。抗炎症薬、副腎皮質ホルモン剤や心蔵疾患などにも用いる、ある種の薬などの副作用として発症するものもあります。これらの場合は、薬剤の使用方法の検討が必要となります。ストレスの関与も、まったく無視はできないようにも思います。

 胃・十二指腸潰瘍の治療とピロリ菌の除菌:
 2003年に「胃潰瘍診療ガイドライン」というものが出されました。これは、診療に際して「根拠(エビデンス)にもとづく医療」という概念が求められており、その概念にそって厚生労働省の研究班で作成されたものです。今後も検討され続けられると思われますが、ガイドラインには、以上述べた内容や治療に関して記されており、潰瘍の原因がピロリ菌であるとの根拠がある場合には、除菌療法を行うべきと考えます。除菌療法は、抗生物質(2種類)と胃酸分泌を抑制する薬の計3種類の薬を1週間集中的に服用します。これらの薬剤は、除菌療法の適応とされているものを使用し、9割程度の方の除菌が出来るといわれています。除菌療法の後も、除菌効果、再発などを念頭に十分な経過観察と潰瘍治療が必要です。かつて盛んに行われていた手術治療は、穿孔、食物が通り難くなる狭窄の合併、出血が内視鏡処置でも止まらない時には適応があります。
 除菌療法には、副作用はないのでしょうか?残念ながら無いわけではありません。下痢・軟便、出血性腸炎、味覚異常、発疹、嘔気などの副作用がいわれています。また除菌後に食道炎を発症することもあります。

 ピロリ菌の検査、除菌治療は、今や胃・十二指腸潰瘍治療の中心となりましたが、潰瘍の原因や程度、患者さまの状態、背景因子などによっては、個別の対応が必要な場合もあると考えられます。さらに詳細は、かかりつけの医師にご相談いただければと思います。


東雲クリニック  竹岡秀生
胃腸科・内科・肛門科・呼吸器科
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