本の紹介

1.聖性の絵画 〜グリュ−ネヴァルトをめぐって  粟津則雄著  日本文芸社 2,345円
2.イエスという男   〜逆説的反抗者の生と死  田川健三著  三一書房  2,940円

 5月1日から「パッション」という映画が封切られました。この映画はイエスの最後の12時間と復活を映画化したもので、非常に残酷なシ−ンが多いことからアメリカではR指定になったとHPに記載がありました。残酷なシ−ンとは、裁判後?、ゴルゴダの岡に至る十字架の道行き?そして十字架上で死に至るまで?、ロ−マの軍隊と戦をするシ−ンはないでしょうから外に何かあっただろうかと考えていたら、表記の2冊の本を思い出しました。

 粟津さんの1.「聖性の絵画〜グリュ−ネヴァルトをめぐって」で扱われているこの画家は1500年前後に活躍しましたが、現存する作品は少ないようです。この画家の特異なところは「死後硬直の痙攣に引きつった醜悪無残な「キリストの磔刑図」」を繰り返し描いていることです。他の画家の磔刑図は十字架の向こうにある希望を表現しており無残さをあまり感じさせませんが、グリュ−ネヴァルトは全身傷だらけで血にまみれ手のひらと両足を太い釘で打ちぬかれた様を微細に書き込んでいます。目を背けたくなるような絵ですが、イエスの無残な身体よりも首をうなだれているすぐ上にぶら下げられている小さな「INRI」との表示板に目が行ってしまいます。悲惨さを通して神に注意を向けようとしているという点では「パッション」と同じなのかなと思いますが、まずは映画を見てきましょう。粟津さんはドストエフスキ−などの文学作品にあらわれたグリュ−ネヴァルトの絵画に対する考え方を通してグリュ−ネヴァルトの内面を探っています。

 2.の「イエスという男」の著者はプロテスタントの新約学者で、信仰と学問は別物との立場からイエスを歴史上の一人の人間として捉える立場からこの本を書いています。キリスト教に関心のない方にもイエスという人間またイエスとキリスト教そしてロ−マ帝国との関係等非常に興味を引かれる内容をもった本だと思います。一人の人間の生き方としてイエスを捉えた面白い本です。ただ、信者さんにとっては、特にカトリックの人にとっては不快な感想を持たれるかもしれません。実際にイエスがどんなことをしゃべり、行ってきたか極わずかしか残されていないためイエス像の再構成は不可能でしょうがそうした断片からユダヤ民族主義者としてロ-マ帝国に反旗を翻した人物として構成されたイエス像には魅力があります。