本 の 紹 介


コロニアリズムと文化財  〜近代日本と朝鮮から考える〜
荒井信一著  岩波新書 756円



 美術館に並ぶ古美術品は愛好家にとっては垂涎の的であり、また関連の図録や書籍にしても座右にないと困るのでいろいろ集めることになります。陳列され、掲載されているものはレベルの高いもので私たちの手に入るものではないため日常雑器的なものが収集の対象になります。地方在住の者にとってはインターネットオークションが容易く手に入れる唯一の機会となります。幸いなことに中国、朝鮮また東南アジアの古いものがたくさん出品され、安価に手に入るようになったのはありがたいことですが、それらの出自を考えると、盗掘された密輸品が大半を占めるのが実態であり大きな問題をはらんでいるといえます。
 この本で扱うのは明治以降の日本と朝鮮との力関係の上で日本にもたらされた一級の美術品の話となります。その陰には、私たちのような愛好家の需要を満たすため墳墓の盗掘がすさまじい勢いでなされていた様子も報告されています。文化財に関心を持つ好事家が書いた本であれば楽しく読めるのでしょう。しかし歴史研究者が、植民地主義の構造を文化財の面から研究したものであるため読み通すのには忍耐が必要になりますが、文化財のあり方を考えるうえで避けて通ることが出来ない問題といえます。実際欧米の美術館の多くがこの問題に頭を悩ませています。文化財は本来造られた地に保存するものでしょう。生活のため墳墓が盗掘されるとなれば記録も取られることはなく、後世の研究に支障をきたしてしまいます。しかし、国の経済力や文化度が未熟なため顧みられず朽ち果てたり、経済の発展の巻き添えを食って破壊されていくものも少なくはありません。だからと言って手元にあるものを合法化することにはならないことも無自覚しなければ入れませんが、目の前でオークションに係っているものを横目で見過ごすのも・・。