本 の 紹 介


植物からの警告
湯浅浩史著  ちくま新書 840円



 学生自体に読んだ「栽培植物と農耕植物の起源」の内容はどこかに行ってしまいましたが書名が記憶にあるのは「人間はすごい」と感じたからでしょう。しかしこの本からは逆に人間の「あさはかさ」を感じさせられました。言葉を替えれば人間の出発点と終着点を見せられたのかもしれません。
 バオバブの木を見ると独特の形とその存在感に圧倒されて言葉もなく只々唖然として眺めてしまいます。この本によってどのようなものなのか、どの辺に生きているのか分かりました。しかし今絶滅の危機に瀕しているとも書かれています。その主な原因は気候変動と人口増加によりバオバブの樹皮が剥ぎ取られ建築資材に利用されるという人為的な原因です。後者はバオバブの木の特性を理解した樹皮剥ぎ取りの技術の伝承が無視されたところに原因があるとのことです。
 また人為的な外来植物の導入による環境破壊の例の一つとして孟宗竹が取り上げられています。竹林は日本を代表する古来からの自然景観としてのイメージを抱いていましたが僅か300年ほどの歴史しかないとのことです。地震が来れば竹林に逃げ込むのが安全だといいますが、それは平地に限ってとのこと。竹の根は50CM程度の深さしかなく、豪雨に遭えば、そっくり地すべりを起し、その下方にある民家や、高速道路も新幹線も危険にさらされていると指摘されています。
 植物を対する人為的な問題また環境変動との関係がわかりやすく、また興味深く解説されています。環境変動は地球の歴史から見れば取るに足らないとしても、僅か80年程度の寿命の人間にとっては大きな問題ですが、今更江戸時代の生活に戻るわけにもいかないし、さりとて原子力も手放せないし、私たちが経験した文明の進歩を楽しみ始めた中国や東南アジアの人たちからは勝手なことを言うなと叱責されそうですし、プロメテウスの火とは何なんでしょうか。