本 の 紹 介


デイ−セント・ワーク・ガ−デイアン
 沢村 凛 著  双葉社 1700円



 私たちが生きていくためには働いてその対価として賃金をもらうことが必要です。当然こうしたことは社会の仕組みの基本中の基本であり、私たちが社会生活をおくるため培ってきた倫理観や文字となったさまざまな決まり事の蓄積の中の一つの仕組みといえます。しかし私たちが社会で生きていく基本である働くことについての決まりごとについて教えられる機会は学校でも会社に入ってからもないのが現状ではないでしょうか。会社は働く仕組みを正しく運用していると思っています。しかし現実問題としてさまざまなトラブルが発生している現実があります。そうした交通整理をしているのが労働基準法であり、それを実行している機関が労働基準監督署です。仕事柄、何度も問題があると是正指導してもらったり、相談したりしてきましたし、逆に顧問会社の退職した従業員から「残業代の未払がある」と申告されたこともありました。こうした問題の処理にあたっているのが労働基準監督官で逮捕権はないものの警察官と同じような役割をしています。悪質な事案であれば各条文に定められた懲役や罰金の適用のため検察庁に書類送検します。
 この本は、まっとうな仕事の守り手としての労働基準監督官を主人公とした6篇の物語が収められています。小説なので誇張はあるでしょうが残業代や労災事故などの問題にどのような取り組みをしているのか、また仕事を通しての悩み事など楽しみながら理解できます。またこうした真面目な取り組みを逆恨みして陥れようと画策する人物が最後に出てきますが、ここまで大がかりではないにしても似たような問題に晒されている仕事なのでしょう。ただ、労働問題の発生量に対して労働基準監督官の絶対数が足りないため私たちは不満を覚えざるを得ないのは残念なことです。