本 の 紹 介


新版 キリシタン伝説百話
谷 真介 著  新泉社 2200円



 私たちの年代の人は、おそらく子供のころあちこちで昔話を聞いたとおもいます。テレビがないころ、またテレビが普及してからも家族で食卓を囲み、寝るまではそこでラジオを聴いたり、テレビを見たりしていました。こうした家族が集まる場があるといろいろな話題も出れば、話もせず黙々とラジオに聞き入り、画面に釘付けになっていましたが、そうした場で、何かの拍子に父の戦争に行っていたときの話や、伯母から原爆の時の話など聞くこともありました。そうした話が語り継がれてこの本のような物語に結実していくのではないかと思います。こうした場での話の中に、荒唐無稽な話ばかりでもなく今の時代では考えることもできない現実の世界があったことが感じられてきます。
 この本は、キリシタンにまつわる昔話を全国から集め、(1)許教時代(31話)、(2) 弾圧時代(37話)、(3) 禁教時代(42話)の三つの時代に区分してあります。それぞれの話の後の注で関連のもの、時代背景等に触れられており、こちらの方がどちらかといえば興味深いところがあります。こうした物語はどこまで真実か別として楽しめます。「61 忍者バテレン金鍔次兵衛(長崎)」など楽しいと同時に禁教時代に信仰を守ることの大変さが面白く語られています。また堺の町で松永久秀と三好三人衆の軍勢が一触即発の状況で陣を張っているさなか。敵味方に分かれながらもクリスマスは一緒に祝い、その後それぞれが戦の準備に戻ったという「15 戦場の降誕祭(大阪・堺)」など許教時代のおおらかさを感じさせられるとともに戦と信仰といった問題も考えさせられる話となっています。
 三つの時代に区分けされた物語を読んでいくとそれぞれの時代の雰囲気がわかりますが、そうしたことを詮索しながら読んでも面白いのですが、何も考えず単なる昔話として読む方がいいのかもしれません。