本 の 紹 介


死にたい老人   木谷恭介 著 幻冬者新書 882円



 新聞の広告か何かでこの本が目に付き同じようなことを考えている人がいると思い関心を持った本でした。著者が3度断食死を目指した日々の記録です。結果としては、それは叶わずこの本を書くことになったということですが、こうした思いを抱く人は少なくないのではないでしょうか。一頃、孤独死がよく報道されていました。最近は、心の荒んだ痛ましい事件が多発するのでこうした孤独死の問題は報道する価値がなくなったのかどうか分かりませんが耳にすることがなくなりました。寿命が延びれば、仕事をしないでなにをするでもなく一日を過ごさざるをえないとなると気持ちも塞いでくるのではないでしょうか。自分のやりたいことなど目的意識をしっかり持っている人にとってはこうした気持ちにはならないでしょうか。体力が衰えれば同じことになりそうです。私自身やりたいことは沢山ありながら仕事は満足に出来ないし、好きなことにも没頭できず、何か分けもわからないことに引きずり廻され、気力も衰えてくる自分に対して嫌悪感を感じるようになってきました。そうなると早く死ぬしかないと考えながらも死ぬ勇気など無く、将来は飢え死にを目指すのがいいのかと考えてしまいます。体力的な衰えと精神的なストレスの相乗効果の結果でしょう。死ぬ気もない人間の思い上がりにしか過ぎないと思いますが、著者も結局は強い意志で死を目指した断食を行なったわけではなく、常に生きることを意識したパフォーマンスだったのか、物書きとしての実験だったのかもしれません。本心からのことであれば生活保護を受けることを辞退して餓死を選択した夫婦の後が追えたと思います。この本は、こうした問題よりも断食が人間にとってどのような感覚をもたらすかの実験として面白いし、真面目に生きることを考えている人にとっては面白い本ではないでしょうか。