本 の 紹 介


生物学的文明論  本川達雄著
新潮新書  740円



 3月11日の東北地方太平洋沖地震は、私達に自然の凄まじい力を見せ付けると伴に原子力活用の問題にも大きな一石を投じました。地球の歴史をみると自然環境とその中で活動している生態系とがそれぞれ一定のバランスをとりながら今日まで続いてきているといえます。しかし人間が地上に出現し、文明を進歩させ、過剰な人口を抱えるようになるに従い自然環境にも生態系にも悪影響を及ぼすようになってきました。こうしたバランスの崩れは地球温暖化の問題として世界的な異常気象などとしても現れてきていますが、何れは自然がバランスを取り戻すために人類に災厄をもたらし、本来あるべき姿に戻すことになると思います。
 この本は生物学者が生態系を通して現代の文明批評として書いたものです。著者は「今の世は、マネーが跳梁する万事お金の世。この貨幣経済の背景にあるものも、数学・物理学的発想です。つまり数学・物理学的発想が、この便利で豊かな社会を作り、同時に環境問題などの大問題をも生み出しているのだ、というのが生物学者として今の世の中を見る私のスタンスです。」といっています。沖縄の米軍基地が辺野古に移転するとサンゴ礁が破壊されるといわれていることを受けてか、サンゴ礁の生態系からこの本は始まり、人間の寿命についても触れています。自然界では老いた生命が淘汰されてきたのは限られた資源を生殖活動の出来なくなったものが取り合いに参加すれば早晩若い命が失われ種が絶滅するためと述べ、人生の前半は正規の部分で後半部は医療の進化がもたらした人工生命体だと述べています。今中国では一人っ子政策の結果少子高齢化の問題が発生しているといわれています。生活が豊かになれば晩婚化・少子化となり、逆にコントロールしようとしても同じ結果とは・・。自然の前には人間の英知といったところで何の用も成さないかもしれませんが、多少は最後の時を伸ばすことは可能かもしれませんし、その間に、自然に調和した世界を築きあげることに期待したいですね。