本 の 紹 介


地を這う祈り   石井光太 著  徳間書店  1,600円


 日本の社会は少子高齢化、リーマンショックの後遺症から回復もままならず貧困の問題がクローズアップされています。同時に老若男女を問わず一人さびしく死んでいく無縁社会という言葉も飛び交い、非常に殺伐とした社会に向かって突き進んでいるようです。しかし世界各地に広がる貧困から見るとまだましなのかもしれません。
 「地を這う祈り」は東南アジア特にインドの貧困層というよりは最底辺で日々の生活もままならない人たちの生業?物乞い、生きるための血なまぐさい抗争・搾取などの現実を写真と簡単な文章で紹介しています。私達が思い及ぶレベルと余りにもかけ離れ想像すらできない現実の世界が展開されています。芥川龍之介の羅生門の中で死体から髪の毛を抜いている世界よりも凄まじい世界・・死者を物乞のための道具とし、物乞いのため自分の腕を切り落としたり、切り落とされて物乞いさせられたりさまざまな現場が報告されています。こうした現実を目の前に突きつけられると悲惨、可哀想といったレベルの問題ではなくただ沈黙し、呆然としたまま思考停止せざるを得ません。この本に紹介された人たちは祈りなど考える余地は無いのではないでしょうか。ただ生きることに猛進する以外ないのが現実ではないでしょうか。「地を這う祈り」とは私達の理解する祈りなど祈りとは言えない。祈りの出発点は生きることに対する凄まじい意志の力を前提にしなければ祈ることなど出来ないと私達に突きつけられた言葉のように感じられてしまいます。