本 の 紹 介


魂の流木                 マイケル・S・コヤマ著  西村書店  1,500円
トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所        中田整一著  講談社   1,800円



 ロシアの美人スパイが逮捕された事件を聞き未だにこうした情報戦争が行われていることを再認識させられることになりました。何をやるにしても正確な情報を早く掴むことが相手を制するまた成功する秘訣であることは何時の時代においても大切なことといえます。しかし幾ら正確な情報を沢山集めてもそれが何を意味しているのか、どのように活用できるのかを的確に把握できない限り役に立たないといえます。私達が普通に生きていく場合でも常に情報を集めています。仕事の情報ばかりでなく、趣味の世界の情報もあり、自分の関心ある分野については無意識の内に行っている行為です。


 この2冊の本はそうした情報を集め、分析し、どのように対処していくかを教えてくれます。「魂の流木」はタイ人と日本人の間に生まれた著者がアメリカに帰化し、何時の間にか一般人として、世界的な経済学者として働きながら、その一方ではG2(陸軍参謀本部第2部)の一員として各国の現場で働いた経験をベースにした小説です。タイから日本に帰り、国賊として父親が処刑され孤児院生活からの脱出、混沌とした戦後の世界の中を生き抜き、東大からアメリカにわたり、帰化、徴兵そしてG2に入り今日までの波乱万丈の生き様が描かれています。


 「トレイシー」は太平洋戦争の終結を見込み重要な情報源となる可能性のある日本軍兵士の捕虜をアメリカに集め、情報収集するため設けられた施設です。拷問や強制によるものではなく会話や盗聴によるものです。捕虜の中には敗戦を予想している者もおり、いろいろな立場の捕虜達の言葉を通じて戦争遂行に当って情報の大切さや人間の心の動きなど興味深い一冊でした。こうした一環として日本の文化研究も行われとりわけ有名なのがルース・ベネディクトの「菊と刀」でしょう。日本では英語が禁止された状況から見ると情報に対する意識の違いに驚かされます。


 情報とは何か、戦争が一般人に何をもたらしたかがよく分かります。