本 の 紹 介


ウィリバーフォース氏のヴィンテージワイン ポール・トーディ著 白水社  2,600円


 ヴィンテージ・ワインはワイン好きに取っては垂涎の的といえます。ただ古ければいいという話でなく、保存に耐えていなければいけません。保存方法の問題もあります。ワインセラー無しでは長期間の保存は無理で、我が家にもそのようなものが多少あり、先日危機感を持って2本ほど開けてみるとシェリーのような味わいがあり早く飲めばよかったと反省しています。この本の主人公は膨大なワイン・コレクションを購入・継承しますが、前所有者であり先生であった者の話ほど素晴らしく充実し、価値のあるコレクションではないことが後日判明します。
 主人公はコンピューターのソフト制作で財をなし、一寸した拍子にワインの世界に引き込まれ、ワインに耽溺し、家族を失い、破産状態に陥り、病気で残りの人生も幾ばくかというときにレストランに現れ1982年ものシャトー・ペトリュスを注文するところから始まります。
 ワインに魅入られ破滅に向かって進んでいく様子はコレクションマニアの世界で共通に見られる現象でしょう。国宝の大井戸茶碗「喜左衛門井戸」の所有者は経営する材木問屋が破産に瀕し、それを処分すればお店が救えるのにそれをせず破産し、路頭に迷いながらもその茶碗一つ持って生きたとの話があります。ささやかなコレクションに執着している者には身につまされる思いに駆られながらも徹底した生き様に共感を覚えてしまいます。
 こうした暗い物語もバラ色だった時代に遡っていく手法をとっているため気持ちのいい終わり方をしているのがいいところかもしれません。