本 の 紹 介


捕食者なき世界 ウィリアム・ソウルゼンバーグ著 文芸春秋  1,900円


 最近の異常気象もさることながらそれに付随しておきている生物界の現象には驚かされます。海水温の変化によって熱帯地方の魚が日本近海で捕獲されていると報道されています。私達は生物界の頂点に君臨して猛威を振るってきており、様々な動植物を捕獲して絶滅させてきた過去を持っています。小学校の理科の授業で食物連鎖の話を聞いたのを思い出します。科学の進歩という大きな武器を手に入れた人間は、この本の題名のように人間を捕って食べる存在から身を守ることにより生物として人間に与えられた「分」を越えた様々な行為により自然を破壊して来ました。
 この本は、人間の世界のことよりも様々な局面における動物や水産生物の例を引きながら頂点に位置する捕食者(トップ・プレデター)がいなくなれば捕食の連鎖が崩れ第二番目に位置する捕食者が繁栄しすぎて自然界のバランスを破壊してしまうことがいろいろな事例で報告されています。一つの例をみると、かって人間が、一定地域のトップ・プレデターであった狼を駆除したことから捕食されていた鹿が増えすぎ、次世代の森を形成する若木や新芽を食べ尽くしてしまい森林が崩壊し様々な悪影響が出ているため、再度トップ・プレデターである狼を導入したことによって鹿の数が減り、森が回復されている様子が報告されています。またあの愛らしいラッコがウニを捕食することで海中の森林である海草類を守っていることもラッコが捕食され減少した事例を通して報告されています。
 こうした自然界で起きていることはとりもなおさず私達人間にも当てはまることでしょう。捕食するものがいない人間のなかでも狭い国土しか持たない日本人は経済的繁栄と人口増加の結果、今少子化という自然の摂理又はDNAの働きによって適正規模への復帰を目指していると考えれば納得が行くことかもしれません。