本 の 紹 介


奇蹟の画家    後藤正治 著   講談社   1,700円



 絵画や陶芸など美術関係に関心があることからこの関係の本を読むことはあっても作家についての評論等を読もうと思ったのは香月泰男ぐらいで他の画家については作品から進んで個人への関心まで進むことはありませんでした。この本は作品が表紙になっており、独特の雰囲気に惹かれて購入しました。真っ暗闇からにじみ出てきた女性の目を瞑った顔です。女神を描く画家とされていますが、女神なのか女性なのか、はたまた心の中の言いようも無いなにかなのか・・。清貧な生活の中から49歳になって世に出た寡黙な画家。どこかで見たような構図もありながらも独自の暖かさのこもった絵を描いています。独特な調子の絵に心を引かれ、癒しを得た人々の話もあり、そうした思いを感じさせるナニカをもった絵なのかもしれません。写真しか見ていないのでなんともいえませんが、画家自身が人に話していない何か分からないもの、心の闇を感じてしまいます。モノには命が宿るのかもしれません。私をホッとさせてくれるのは浄瑠璃寺近くの笑い仏と呼ばれる阿弥陀様の石仏です。心の中の闇を見つめることを忘れてしまえば生きる意味を忘れてしまうことになるのかもしれませんし、安らぎを得られるナニカが無ければ生きて池なのかもしれません。この画家のように清貧の内に一途な生活できる人間でないためこうした絵やその人の生き様を追体験することによって自分の心の中を覗く為の切っ掛けを与えられました。いままで香月泰男が好きな反面シベリア・シリーズの重さを感じて掛ける気持ちにならなかった香月泰男の絵を再度掛けようという気持ちにさせてくれた本でした。