本 の 紹 介


羆 撃 ち     久保俊治 著  小学館   1785円



 野生の動物の肉の美味しさを知ったのは「深山」といういのしし肉専門店でシャブシャブを食べたときでした。それまでも、牡丹鍋や熊の肉なども食べましたが珍しさだけで美味しいとは思いませんでした。しかしいのししのシャブシャブは目からうろこで美味しさに嵌ってしまいました。80過ぎの大将の話によるとどんぐりをしっかり食べているいのししがおいしい。他のけだものと比べものにならないため今ではこれしかやらないとの事でした。
 この本は北海道の羆を追う猟師が猟師になるまでまた羆や鹿をどのようにして追い詰めていく様子が詳細に説明されています。最初は一人で何日もかけて羆の後を追いかけて仕留めていますが、そのうち北海道犬を猟犬として育てあげ犬とともに一途に追い詰めていく様子には感動を覚えます。ふつうの生活を離れ大自然の中で羆を追ううちに感覚が研ぎ澄まされ自然の動きが分かるようになるとともに様々な奇怪な現象にも遭遇し、山の魔物と呼ばれるものとの遭遇した経験などが報告されています。文明が進化するに連れて人間の感覚は衰えていったのは確かでしょうし、一つのことを突き詰めていけば言葉では言い表せない嗅覚というか何か違うという感覚を身につけることができます。大自然の中での生活を通して、私たちが忘れた世界にこの本は気づかせてくれます。修験道の世界も同様なのかもしれません。世間に生活しながらそうした失われた感覚を取り戻すためには心を一点に向ける座禅なり黙想なりの効用を改めて考えてしまいました。