本 の 紹 介


神 鳥(イビス)    篠田節子 著  集英社文庫   570円



 著者については全く知らなかったのですが、「私の中のあなた」の情報を検索しているとき「ゴサインタン」と「弥勒」という本が引っかかり、取り敢えず美術に題材をとった「贋作師」、「聖域」そしてこの「神鳥」と一気に読み進んできました。サスペント、ホラー、ファンタジーどのように分類すればいいのか分かりませんが、生きることから生じる情念というか怨念というか凄まじいものが感じられ、最初の一ページからぐいぐい引き込まれていきます。
 この「神鳥(イビス)」は100年前の朱鷺を描いた美しい油絵のもつ秘密を解き明かそうとしていくイラストレーターと売れっ子の作家が遭遇した出来事を描いていきます。人間に絶滅させられた朱鷺の怨念が渦巻く幻想の世界に迷い込み、雪に閉ざされた山奥の人もいなくなった村で朱鷺に襲われる後半部の情景は背筋の凍る思いがしながらも引き込まれていきます。また、この村で彼らが食べる闇夜汁も何かしら不気味さを漂わせます。絵にこめられた怨念とまでは言わなくてもそれぞれの思いを持って描いているでしょう。しかし、その背景にある体験を知れば知るほど構えてしまう絵もあります。香月泰男の絵にそれを感じ一度飾り、直ぐに仕舞ってしまいました。「神鳥(イビス)」に描かれた幻想もホラーとして出なく、生きていく上での原罪としてみることも出来るかもしれません。香月泰男の絵を再度飾ってみるのもいいのかもしれません。
【闇夜汁】朱鷺の肉を使った鍋料理で、朱鷺の肉に含まれる赤い色素や赤い脂が溶け出し血の色をした汁となるため明るいところでは気持ち悪くて食べられないことから付けられた名前といわれています。