本の紹介


1.赤朽葉家の伝説  桜庭一樹著  東京創元社   1700円

 疲れたときには、考える必要も無く、ただストーリーを追っていれば楽しめる本が読みたくなります。この本もその例に漏れず読み始めたものでした。同時に、「紀元1万年前」という映画も観てしまいました。
 桜庭一樹という作家を知ったのは、著者が今年「私の男」で直木賞を受賞したことからで、少し遅れて読み始めたのですが、いっぺんに引っ張り込まれてしまいそれ以来次の作品もと思っていたのが「赤朽葉家の伝説」でした。鳥取県の山奥の製鉄業で財を成した赤朽葉家に嫁入りした千里眼の祖母万葉、漫画家の母毛鞠そしてごく平凡な私瞳子に繋がる三代の女性の歴史を軸に私が祖母の千里眼にまつわる謎解きに迫っていきます。第1部は、自殺者の処理に山から降りてきたサンカが置き去りにした赤子が製鉄会社の職工に育てられ、赤朽葉家に嫁入りした万葉の話し、第2部は、その子供の一人毛鞠が暴走族となり中国地方を制覇し、暴走族卒業後自分の人生を劇画にし、脚光を浴び、兄の死から赤朽葉家を継ぐため婿をとり、全てを書き終わって突如死んでしまう。ここまでは二人の生き様を描いてきますが、第三部は、祖母や母と違いごく普通の女の子瞳子が、祖母が千里眼で見た内容が殺人事件に関係しているのではないかと祖母と母の時代に起きた死亡事件を調べ、犯人探しの謎解きに向かっていきます。この第3部か推理小説で、あとの二つは、第3部の伏線ではあるとはいっても、それぞれの生き様の独立した物語として楽しめます。上下2段で300ページと分量はありますが、いつの間にか読み終わってしまうといえます。