本の紹介


1.こころみ学園 奇跡のワイン  川本敏郎著  NHK出版   1300円

 「ココ・ファーム・ワイナリー」をご存知でしょうか。ワイン好きなら雑誌等で目にされていると思います。名前は知ってはいたのですが、呑んでみたいと思いながら忘れていたところ本屋さんでこの本が目についたので買い求め、2000年の沖縄サミットのとき晩餐会で乾杯に使用されたのがここのスパークリング・ワインだったと知りました。飲み物担当に指名されたのはソムリエの田崎伸也さんで、当然綺羅星のようなワインの数々が出された中のトップバッターには1本250万円のシャンパーニュ地方のものを予定しながらも、ココ・ファーム・ワイナリーのものを選んだということは無名ではあっても世界的に認められる実力を持っていると評価されたからでしょう。ちなみにここのワインを造っているのは知的障害者更正施設こころみ学園で生活する知的障害者たちであり、醸造責任者でニューヨーク生まれのブルース・ガットラブです。
知的障害者たちが造っているのは知っていましたが、ワインについてばかり書いてあると思っていたところ知的障害者更正施設こころみ学園が立ち上がる前からの苦心惨憺たる状況、知的障害者の状況などが前半部分を占めており、後半部分がワイナリーについての話でした。当初は、シイタケ栽培と生食用のブドウ栽培を行っていたのですが、手間暇かかりながらも売り上げの上がらないブドウ栽培からワイン醸造に移つり、後にブルース・ガットラブを招聘して本格的ワイン造りに転換したそうです。しかしベースにあるのは知的障害者の働き場所の確保です。こころみ学園の方針は開設以来根気の必要とされる単純作業が必要な農作業を中心としており、その結果、知的障害者たちが薬漬けから開放され、精神的にも落ち着きを取り戻し、筋肉質の体に変わっていき、お互いに配慮しながら共同生活を通じて社会生活ができるように変わっていく様子などが報告されています。知的障害者と接する機会もない私たちにとってワイナリーの話を聞きながら、知的障害者施設の大変さを知っていただければとおもいます。この本にでは触れられていませんが、福祉の職場における労働行政と福祉行政の連携のなさが福祉施設の運営を難しいものにしているという現実もあるんですが・・。