本の紹介


1. 悪口という文化  山本幸司 著 平凡社 2,400円

 子供のころを振り返ると、町内の路地で遊ぶのが普通で、他の町内や路地で遊んでいるグル−プとは少し溝があったように思います。そうした狭い生活空間で生活していれば、暗黙のうちの了解事項といったものもあります。そのためにも人の悪口を言ってはいけないと聴かされてきていたのだろうと思います。こうした生活環境がなくなってしまった現代社会では、心の中に蠢く憂さをインタ−ネット上の掲示板等への誹謗中傷、またいじめという形で吐露するという悪しき文化が生まれてきているのかもしれません。
 しかし、この本が対象としているのはそうしたものではなく、人間が誕生して以来、あったと思われる悪口を自分たちの共同体を守るものとして積極的にその存在価値が認められてきていたことを国内外の事例を引きながら悪口が一つの文化として存在してきたことを、古い習俗、文献などを通して紹介しています。
 例を挙げると、日本各地にみられる悪口祭の実態も、共同体の秩序を維持するための制裁であったり、寄付の要請などの側面を持っていること、江戸っ子の喧嘩も暴力を振るうものではなく悪口の言い合いで悪口の上手な者を観衆が判定するというものであったことなどが紹介されています。
 悪口の原因は、法律的に白黒を争うようなものではなく、一寸した行き違いが原因でしょうから、事前に悪口を言われることを避けるために共同体の暗黙の決まりごとを守もらせるためにおおっぴらに悪口が公言できるお祭の場を積極的につくってきたのかもしれません。