本の紹介


1.勘定奉行 荻原重秀の生涯 村井 淳志 著  集英社新書 700円

 歴史に関心を持つ人は多いと思います。歴史的史料の乏しい事件・人物などについては妄想をたくましくして素人でも参加できるところがあります。邪馬台国がどこにあったかなどその良い例かもしれません。また、史料にも恵まれず数少ない史料がその人物を酷評したものしかない状況から誤解のうちに悪人呼ばわりされて省みられることもない人物も多いと思われます。そうした人物の一人として著者は元禄時代の貨幣改鋳の責任者であった荻原重秀に光を当てています。江戸時代初めて検地を行い、佐渡奉行として佐渡金山の改革、数度にわたる貨幣の改鋳また長崎奉行として金銀の海外流失を抑えるため大阪銅座を設けたことなど時宜に適した改革を行ってきた人物として再評価しています。
 こうした改革にも関わらず悪人のレッテルを貼られたのは新井白石が毛嫌いし「折たく柴の記」で悪人呼ばわりをしていることのみを持ってそれ以降の評価が決まってしまったといっています。確かに新井白石の史料以外何も無い状況ではやむを得ないのかもしれませんが、わずかに残された史料を拾い集めてその事績を再評価していく過程を眺めてみることによって、マスメディアの報道体制にも一脈通ずるものを感じてしまいます。今年はイエズス会の宣教師ルイスフロイスの日本史を読もうとしていますが、織田信長やその時代の動きなどイエズス会の立場から書かれているためまったく違った人物像や歴史の動きが見えてきます。人それぞれ見方があるので批判的な態度を忘れないようにしなければいけませんね。