本の紹介

本の紹介


1.ワインと外交 西 川 恵 著  新潮新書 700円

 ワインの会を開催しようとすれば、どのようなワインを選ぶかまたそれに合った料理はどうするかということを自分の好みに従って考えます。あくまでも「自分は何が呑みたいか」が基準となりますが、参加するメンバ−によって自分の好みを修正し、お互いに楽しめるワインを選び、それに従って料理を考えるのは楽しみの一つです。
 しかし、外国の要人を迎えた晩餐会ではどうなのかなどまったく考えたこともありませんでした。ソムリエが料理に合わせてワインを選ぶだけとの認識しかありませんでした。この本を読んでまさに晩餐会は政治の駆け引きの場、相手に対する軽重の度合いに応じてセットされている場、交渉ごとの帰趨をも決めてしまう場であることを示しています。その中でも、料理の脇役的なワインに託された暗黙のメッセ−ジがあることを沢山の晩餐会等を通じて描いています。
 一つの例を挙げると、フランスのシラク大統領とドイツの退陣目前のシュレ−ダ−首相の最後の会食が生牡蠣や貝類、ゆでたカニなどのを盛り合わせたものだけで、ワインはコルトン・シャルルマ−ニュであったことを次のように読み解いています。「海の幸の盛り合わせ」だけ、また生ものを出す晩餐会は考えられないことだが、これは二人の親密さをあらわしており、かってこのワインが造られた畑を所有していたシャルルマ−ニュ大帝にちなんで名づけられ畑で造られたワインを出したのは、シャルルマ−ニュ大帝はフランスとドイツを合わせた領土を所有しており、大帝の死後、領土は、今のフランスとドイツに分かれていったという歴史を踏まえて仏独共通のル−ツを象徴するワインとして選ばれたと解釈しています。
 また、2004年にフランスが国賓としてエリザベス女王を迎えたときの晩餐会のワインは、シャト−・デイケム90年、シャト−・ム−トン・ロ−トシ−ルト88年そしてドン・ペリニオン95年とため息が出てしまうものばかりです。出席者総数240人。1本を3人で計算してざっと3000万円となるそうです。夢物語としか言いようが無い世界です。
 肩が凝らずに外交の側面を垣間見ながらワインの話が楽しめる本です。