本の紹介


1.ロックを生んだアメリカ南部 〜 ル−ツ・ミュ−ジックの文化的背景
     ジェ−ムス・M.バ−ダマン・村田薫 著  NHNブックス 1,120円

 音楽には何かわからないけれど人をひきつけ気持ちを一定の方向に導いていく作用があります。教会で歌われる賛美歌はまさにそうしたものだといえます。今流行のゴスペルもまさに神様に向かっての思いが歌われています。しかし、今日本で関心を持っている人はゴスペルという調子が好きなだけかもしれません。実際、私がカントリ−やブル−スが好きだといってもメロディ−やそのジャンルの歌い方が気に入っているからでしょうし、詩や音楽が成立した背景またどのような思いが込められているのかまではわからないまま聞いているに過ぎません。
 初期のカントリ−歌手やブル−スシンガ−のいでたちを見るとなんでネクタイにス−ツなのか、また派手な服装なのかと不思議に思います。そうした背景にはこれらの音楽をつくりあげた人々がヨ−ロッパからの移民であったり、アフリカから奴隷として売られてきた人々であったりと貧困にあえぎ、虐げられてきた人々の心の叫びが彼らの生活であったことを考えれば納得がいくのではないかと思います。この本では、ブル−ス、ジャズ、ゴスペルそしてカントリ−のそうした成立の背景を解説しています。著者は次のようにまとめています。「南部のル−ツ・ミュ−ジックは、ブル−スにしてもカントリにしても、悲惨な生活から生まれ、哀しみを歌うものが少なくない。そういう気の滅入るような内容の歌が、なぜか多くの人の心を捉える。それは歌を通して体験を共有するということが人間に計りしれない力を与えるからだ。人間はただひとりで自分の存在の無意味さに耐えることができるほど強くはない。しかし、たとえ家郷に帰れなくても(homlessness)、土から切り離されても(uprootedness)、そしてまた、愛する者を失っても(blues)、その喪失の切実さを分かち合う人々がいる限り、私たちは生きることができる。音楽が愛という言葉と結びつくとすれば、そういう意味でだろう。哀しい音楽がなぜ楽しいか。美しいからだ。そして心のありようを偽らずに伝えようと模索するからだ。ル−ツ・ミュ−ジックはそうした単純さを失わない音楽だ。」こうした時代背景またこれらの音楽を「オ−ブラザ−!」という映画がよく描き出しています。挿入されている音楽も素晴らしいのでこの本と合わせてご覧ください。