本の紹介


1.物語 古代ギリシア人の歴史   周藤芳幸 著  光文新書   760円

 前回に引き続き古代ギリシア関連の本の紹介をします。ギリシアというと神話、悲劇そして喜劇と興味を引くものがいろいろありますが、その歴史また社会を扱った手ごろな読み物が意外と少ないように思います。そういった意味では前回紹介した本など面白く仕上げていたといえます。この本は、前回と同じように法廷弁論に題材をとったものもありますし、落書きや彫刻などから資料を集めたものもあります。こうして集めた7つの物語を通じて前6世紀前後から前2世紀ごろまでのギリシアの歴史や社会に触れています。歴史の流れを勉強しようとの立場を離れてそれぞれがその時代の社会とのかかわりで面白い物語となっていることを楽しめばいいのではないかと思います。今まで思い描いていたギリシアのイメ−ジとは違ったものが見えてくるかもしれません。
 歴史を見る場合、ある国の歴史を政治史や社会史として叙述したものは今ひとつ面白みに欠けるのではないかと思います。ひとつの国の歴史はそれを取り巻く世界との係わりがあって初めて成り立っているものですから、そうした見方ができなければ歴史からは何も学ぶことはできないかもしれません。特に、ギリシアの場合、東地中海を取り巻く世界との関係を無視すれば何もわからないというのが現実かもしれません。ホメロスの叙事詩のイリアスやオデュッセイアの世界はギリシア人が主人公ではあってもギリシア本土が舞台ではなく東地中海世界が舞台であったようにこの本の第1章はギリシア人の傭兵がエジプトのアブシンベルの神殿に残した落書きから始まっています。