本の紹介

1.訴えられた遊女ネアイラ      デブラ・ハメル 著    草思社   2,000円

 この本は古代ギリシアのアテネでの裁判を扱ったものです。というと堅苦しいかというとそうでもなく、遊女の生活を扱ったものであるという点では三面記事的な面白さがあります。もともとネアイラの夫と敵対関係にあったアポロドロスがネアイラの身分を問題にして起こした裁判での弁論をもとにしてかかれているためゴシップだらけと言っていい内容なのですが、その中に直接民主制を完成した古代ギリシアの限界の一面をみることができます。それは身分制度の問題です。ネアイラ自身市民身分があるのか、奴隷身分なのかといった問題になっています。アテネの場合、市民、在留外人、解放奴隷そして奴隷と言った身分制度があり、政治に参画できたのは市民身分の男子に限定されていました。直接民主制の心臓部が民会です。民会は、この機関誌の名前のエクレシアを訳したものです。キリスト教では教会と訳されています。古代ギリシアの身分制度は面白く、警察官や家庭教師は奴隷身分が担当していたり、別居奴隷といって主人とは離れて商売を営んでいる者がいたり、戦争を担当するのは市民身分に限られていたりと面白い世界です。青い空に聳え立つパルテノンの神殿、ミロのビ−ナスなどが造られたギリシアを思い浮かべながらこの裁判を通じて古代ギリシアの人々の生活の一面を垣間見るのも面白いのではないかと思います。