本の紹介

1.コメを選んだ日本の歴史      原田 信男 著    文春新書   790円

 日本人は主食としているご飯を毎日当たり前のように食べています。しかし、コメについてコシヒカリかササニシキか、何が美味しいかには関心があってもコメそのものが歩んできた歴史については何も知らないのが現実でしょう。「食べるものだから」といってしまえばそれまでですが、日本人が肉食でなくコメを選んだ過程にはそれなりの国家としての権力の成立とは無縁でなかったといえます。この本は、日本ではコメが何時から食べ始められたのか、また、コメが日本の国の形を作り上げていく上で果たした役割や社会・文化との関係について縄文時代から今日の社会に至るまでを概観しています。こうした視点から日本史を眺めてみると今までの歴史とは違ったものが見えてきます。特に、肉食文化との関係というか、北海道と沖縄また日本本土の一部においては肉食文化が展開していたことなど、今のようにご飯が日本全国当たり前に食べられだしたのは昭和30年代の高度成長期以降であったとの指摘は意外なことでした。
 学生時代に岩波新書の「栽培植物と農耕の起源」を読んで交通手段としては徒歩と丸木舟ぐらいしかなかった時代にコメなど栽培される植物の伝播の早さにびっくりしたのを覚えていますが、こうして運ばれてきたコメと人間の文化・政治との関わりの大きさに再度びっくりさせられます。当たり前のことであっても、今一度考えてみると全く違った世界が見えてくることを再認識させられました。