本の紹介

1.医療崩壊 「立ち去り型サボタ−ジュとは何か」小松秀樹著 朝日新聞社 1600円

 医療過誤を告発する本は、この欄でも紹介した「ぼくの星の王子さまへ」や「カルテ改ざん」など被害者やその弁護士さん等からのものは沢山あります。確かに問題となる医療もありますが、それらは少数ではあってもマスコミで一方的な取り上げられ方をされることにより医療総てに対しての認識として刷り込まれていき、医療不信が増幅されている面も少なからずあるといえます。
 こうした風潮が医療の崩壊を招いており、大きな問題となっている状況を医師の立場から報告しています。「医療が進歩するにしたがって、医療への要求がつよくなった。患者は医療にはすべてのことが可能であり、生命は永遠であると思うようになった。患者が死亡すれば、医療過誤があったのではないかと猜疑の目でみられるようになった。医療が進歩するほど、紛争が増えるという、皮肉な状況になっている。/医療の結果が期待道理でないとき、とくに、小児科や産科では、死や傷害が受け入れられない。悲しみが医療への恨み、さらに、ときとして攻撃につながる。患者側からの攻撃の強い小児救急や、紛争の多い産科診療など脆弱な部分から医療が崩壊しはじめた。」と問題提起しています。また、「医療の不確実性は人間の生命の複雑性、有限性、各個人の多様性、医学の限界に由来する。医療行為は生体に対する侵襲を伴い、基本的に危険である。」と述べられているように、医療を受ける以上、われわれも応分の危険負担を覚悟する必要があるといえます。
 人間の命は有限であり、「生老病死」を人間は避けて通ることができません。医療の目的は不老不死や死なせないための技術を開発することではなく、死という目的に向かって充実した人生を送ることが出来るように支援することだと思います。第一線で医療に携わっている医師からの医療現場の報告として大いに参考となるといえます。