本の紹介

1. ヤクザに学ぶ組織論
山平重樹著   ちくま新書 680円
                       

 ヤクザの世界については、高倉健の映画とか、仁義なき戦いの世界しか思い浮かびませんし、明確な組織運営がなされているのかと考えざるをえませんが、山口組の全国的な展開を考えれば、組織としての統制が取れていなければ成り立たないでしょう。一晩のうちに100人200人の人間を目的地に投入できることをみても組織がしっかりしていないと不可能といえます。冒頭に、ヤクザ自身「ヤクザもの、馬鹿じゃ出来ない、利口じゃやらぬ。中途半端じゃ、なおできぬ。」と位置づけているとの紹介がありました。確かに、脱ヤクザの牧師さん連中を見ると「親分はイエス様」と一旦決めたらがむしゃらに突っ走る、この馬力の原動力となっている忠誠心、対象こそ違え親分に対する忠誠心が組織維持の大きな原動力となっているのかもしれません。
 著者は、ヤクザ組織の特徴として次の三つを上げています。@本部を頂点とした二等辺三角形の合理的なヒエラルキ−体系が確立していること、A組織の意思が命令として不可抗性を伴って全構成員に速やかに伝達され、違反者には物理的暴力を含めた非合理的な形での罰則が適用されること、B罰則の度合いが「攻め」の組織意思よりも「守り」のそれに違反した際により強度なものとなる合理的非情主義が貫かれていることを指摘し、「ヤクザの組織とは、実をいえばこの相対立する三つの「原理」の組み合わせを基礎として成り立ち、対立する原理の緩急自在なコントロ−ルによって強靭な組織力は培われているのである。対立する原理を調整する手際のよさは、本質的な「闘争集団」が身につけた、いわば動物的本能に淵源すると称しても大過なかろう。 組織力維持のための合理と非合理との自在な調整。ヤクザ組織から「組織論」を学ぼうとするなら、まずこの一点にこそ着目すべきである。」と述べています。