本の紹介
1.出るくいは打たれる 〜 フランス人労働司祭の日本人論
アンドレ・レノレ著  岩波現代文庫  1000円
                       

 私たちは就労すれば、労働基準法や労働者災害補償保険法で守られていることを当然のことと思っています。たとえ、事業主がこれらを無視していたとしても労働基準監督署に申告すればそれらの恩恵を受けることが出来ます。しかし、現実問題として、労働者を守るはずのこの二つの法律が必ずしも守られていない現実もあります。
 今回紹介した本は、建設現場の下請けがどのような労働環境におかれているかをフランス人の司祭が報告しています。この司祭は、フランスの修道会から日本に派遣されるとき、日本での任務の一つに「労働者の生活の実態や精神構造や独特の言葉をかれらのふところに入って理解すること。」を掲げ、その実践として、1970年から21年間川崎市の下請け零細企業で司祭としての仕事と並行して労働者として働かれました。このときの日記をもとに労働、労災、過労死、残業、組合、社内旅行など31の項目を立てて報告されています。フランス人と日本人との労働観の違い、法律があっても有名無実の世界で働いている下請け零細企業の実態がよく描かれています。
 前月号で労災保険の未加入事業所に対するペナルティ−が厳しくなる事に触れられていますが、このことはこの司祭の報告している実態が一般的に存在していることの現われといえます。それなりに配慮してくれる企業で働いている者には分からない現実をこの本を通じて垣間見ることができます。