本 の 紹 介

「その日暮らし」の人類学 〜 もう一つの資本主義経済 〜  

小川さやか著  光文社新書  740円

 外国人と接していると、いい意味、悪い意味問わず、また国籍を問わず「したたかな生き方をしている」と感じます。ある面なじめないところもありますが、バイタリティーにあふれていること、また彼らが持っているネットワークが国の壁を超えていることには刺激を受けます。こうした世界には、わたしたちの考える資本主義の価値観や将来に向かっての蓄えをするといった価値観とは違った世界を感じます。こうしたことを著者の研究舞台であるタンザニアでの事例を通して説明しています。そうした生き方をのもとになる基本的な価値観を「Living for today―その日その日のために生きる―」と捉えています。フィリピン人の世界を見ていても同じような感じがあるので近代化する以前の社会で共通にみられるものかもしれません。
 タンザニアでは、露天商や行商の世界で成功した人がノウハウを隠すこともなく教えていく世界であり、その延長線上で中国との取引まで同じような乗りで拡大している様子が紹介されています。また金銭の貸借についても独特な世界があり、高額なお金が緊急に必要となった時でもお金を貸している相手に対して、返済を求めることもなく、相手を含めて誰かに借金の申し込みをするのが普通とのことです。ただこうした慣習が携帯電話の普及によって崩れて行っていると説明しています。社会の進歩発展によって共同体という価値観が変容していくことを悲しんでも仕方が無い話ですが「Living for today」を再認識した生き方を心がけたいですね。