本 の 紹 介

台湾生まれ 日本語育ち

温 又柔 著  白水社  1,900円

 外国人との共生という言葉がありますが、何が共生なのか分かったようでわからないところがあります。ゴミ出や町内会など小さな地域社会での関係づくりだろうと思います。相互理解とまで言ってしまうと不可能な話となってしまいます。これまで外国人といろいろな関係を持ってきましたが外国人と日本人と言う壁が取り払われたかと言うとそうは思えません。しかし表面的な付き合いかというとそうではなくかなり深刻問題にも首を突っ込んで悩むこともあります。そのため自分なりに観察し、いろいろ本を読んで理解しようとしてもそれは自分勝手な思いこみに過ぎず、信用など得られていない事実に直ぐ気づかされてしまいます。そうは思いながらも右往左往しています。
 この本は、台湾人の両親から生まれ、3歳のころから日本で生活し、小説家となった人、外国人との意識を持たない外国籍の日本人?が日本と家族と台湾の親戚などとの関係を「ことば」を通して様々な思いを述べています。変に誇張したり、笑を取るようなこともなくこれまでの日常生活の一端を通して複雑な心境が淡々と語られ、いつのまにか引き込まれてしまいます。免許証更新手続きで外国人登録証の提示を求められてそれが何であるのか、常に携帯しておく必要があると知らなかったと語っており、こうした自分をペーパーガイジンと表現しています。「私が日本人じゃない、だなんて。そんなのは紙の上のみの事実よ。/そんな風に笑い飛ばそうと意気込んでみても、紙の上に記された文字を完全に無視することができないでいる。」そうは言いながらも、「先のことは分からないが、今のところわたしは、帰化をしようとは思わない。できればずっと、台(、)湾(、)人(、)で(、)あ(、)り(、)な(、)が(、)ら(、)日(、)本(、)人(、)で(、)い(、)た(、)い(、)。そのため台湾籍を保持したい気持ちなのだ。」と述べています。また、日本語を国語として学び日本語が話せる祖母、日本語が全く分からない母そして自分との関係など私たちには思いもつかない世界が展開されていきます。外国人に関心を持つ人はぜひ読んでみてください。