本 の 紹 介

中空構造日本の深層

河合隼雄 著  中公文庫  705円


 お正月頃だったか、「100分de名著」と言う番組がゲスト数名を招いて対談やらそれぞれのおすすめの本の紹介などをしているのを眠りながら聞いていると精神科医の斉藤環さんが河合隼雄の「中空構造の深層」の紹介をされましたので翌日買ってきて読んでみました。
 この本は深層心理学者である著者が日本神話や昔話等からヒントを得て日本人のものの考え方について書かれた論考を集めた本でした。内容は3部からなり、第1部が日本神話を中心に中空構造についての3篇、第2部は昔話や民話を中心に深層心理についてのもの4篇、第3部は現在の問題について5編の論考が集められています。第3部には「フィリピン人の母性原理」というものが含まれており最初にこの部分から読み始めてしまいました。これは海外在住の日本人の子供たちの教育問題の一環としてフィリピンへの調査団の一員として見聞きされたことを書かれています。仏教が中心のアジア地域において唯一フィリピンはカトリックの国でありながら父性的な宗教を母性的なものに変容させて受入いると述べられています。確かにフイリピン人は子供が万歳している像を拝んでいるのをこれまで不思議に思っていました。これはカトリックのサントニーニョ(幼児期のキリスト)信仰をアジアの母性的感性に併せて受容した結果と納得できました。その結果フィリピン人にとって三位一体とは、「神と子と聖霊」ではなく、「神と子とマリア」と理解されているとのことでした。この辺りのことは機会を見つけて確認してみようと思っています。
 思いがけずフィリピン人のメンタリティーを知ることができたのは大きな収穫でしたが、本来の目的であった日本人の深層心理は中空構造であるとの点については、古事記に書かれた神話の成り立ちを通して日本人の考え方の深層には中心に絶対的権力者が存在せず、それを取り巻いて有力者が存在していると説明しています。その例としてイザナミとイザナキの子供にアマテラス、ツクヨミとスサノオがおり、月の神であるツクヨミが日本人のメンタリィティーとしては中心となるべき存在なのに全く存在自体無視されている。また同様に古事記冒頭の最初の神としての天之御中主神、高御産巣日神と神産巣日神の三神の中心であるべき天之御中主神の存在感は全くない。日本では弁証法的に中心が生まれることではなく、むしろ中心となる存在が現れると取り除かれていく構造が日本人の深層心理の中にあると説明されています。