本 の 紹 介

フィリピンの小さな産院から

冨田江里子 著 石風社  1,800円


 この本の舞台は、ルソン島の西側にあるピナツボ火山が1991年に大噴火を起こした後に被災民に対して開かれたマンガハン再定住区にある著者が運営する産院です。産院での活動を通して出産を巡る様々な問題、民間医療との関係やお金を支払えなければ病院にもかかれないし、治療も途中で打ち切られたり、また治療が受けられたとしても裕福な人とは違い、人権が無視された状況下でお産をさせられ命を失う子供も少なくないなど、私たちの常識からは考えられない話が展開されていきます。特に若年者の出産や闇中絶も頻繁に行われそれに失敗した結果、片目が無かったり、手が無いと言った障害を持って生まれてくる子もいるようです。ジャパユキさんの子供のことや実家の生活のことなど溜息しか出ない世界が展開されています。ただ救いになるのは次の言葉でした。「途上国では、老人も障害を持つ人も赤ちゃんもすべて一緒くたに暮らしている。普段から彼らがどういう特性を持つ人かを肌で感じて生きている。だから、あらゆる場面で適切な支援の手が当たり前のこととして差し伸べられる。たとえば赤ちゃんを連れていれば、どこでも人が親しげに話しかけて子どもと遊んでくれるし、バスや電車の席はどんな満員でも絶対に譲ってもらえる。子供が泣こうが駄々をこねようが、そこで文句を言う人や冷たい視線を飛ばす人は皆無だ。泣いている赤ちゃんがいれば、誰でも心配になってしまうのがこの国の人々なのだ。」しかしこうした状況と同時に「両親のどちらかが、子どもも何もかも捨てて逃げだすことは実は珍しいことではない。子どもを置いて逃げても、ここでは罪にならない。もともと日本のように絶対に母親が子育てするものという観念も希薄で、誰か育てられる人(多くは血縁者)が育てる。」と言うことも普通にあるようです。ただこの辺りのことは周りを見回してみてなんとなく納得してしまうのですが、中流以上の生活が安定した人達との関係でも同様なのかと考えてしまいます。フイリピン関連の本としては真面目な内容であり、かつ楽しく読める本でした。