本 の 紹 介

人類が絶滅する6つのシナリオ
河出書房新社 フレッド・グテル著  2200円


 ある植物が一か所に異常繁殖すると絶滅してデッドスポットが出来るという話を読んだ時から人類の絶滅と言う言葉には強い関心を持ってきました。人類が爆発的に増加して行けば当然地球環境との調和が崩れてしまいますし、食糧確保のための領土争いが激化し、世界を支配しようとする動きが出てくることになります。同時に、社会生活をより豊かにするための資源確保も当然激化します。一方では国境を越えて社会を統制制御するコンピュータ・システムも強化されていきます。またウィルスの合成を始め、臓器移植・生殖医療といった生命の操作の精度も高まってきました。生命操作の結果は数世代後にしか出ません。人類の進歩はこれからどのような結果を招くのか予断を許さない状況にあるといえます。
 著者は、地球の歴史で5回は大量絶滅があったと言っています。最も新しいのが6500万年前の隕石落下による恐竜絶滅です。こうした外部的要因による絶滅もあれば周期的な気候変動によるものもあり、生態系の変化により、また科学の進歩により引き起こされる大量絶滅もあります。著者は、(1)世界を滅ぼすスーパーウィルス、(2)繰り返される大量絶滅、(3)突然起こり得る気候変動、(4)生態系の危うい均衡、(5)迫りくるバイオテロリズム、(6)暴走するコンピュータ、の6章で絶滅へのシナリオを描いています。人類が滅亡したはるか後の時代のシナリオもあるでしょうが、明日にでも、同時に発生してもおかしくないシナリオもあります。一番の脅威は(6)のコンピュータの問題かもしれません。ここではスタックスネットと呼ばれるコンピュータ・ウィルスが紹介されています。シーメンス社製のコントローラーチップスに対してだけ反応するウィルスでイランの核施設に大きな被害をもたらしたことが報告されています。今の社会はコンピュータ・システムを抜きにしては成り立ちません。国家機関、軍事機関また社会生活基盤である交通管理システムや電力供給システムなどへのコンピュータ・ウィルスによる攻撃や誤作動が思わぬ結果を招きかねません。こうしたものに対して国家やテロ組織によるまた面白半分の素人によるサイバー攻撃で最悪の事態が発生するというのが最も恐ろしいシナリオかもしれません。こうしたシナリオを前にすると平家物語の冒頭の一節が思い出されます。