本 の 紹 介


楽園のカンヴァス
原 田 マ ハ 著 新潮社 1,600円


 本屋さんが売れ筋の本や自分自身が面白いと感じた本を毎年投票で本屋大賞を選定しています。その2013年の大賞候補となったコーナーにあった本でした。たまたまページをめくっていると画家アンリ・ルソーの作品(左の絵)を題材にしていたため買って帰りました。この画家に関心を持ったことはありませんでしたが、ひろしま美術館に「要塞の眺め」という絵が常設展示されているので名前は頭の中にあっても色彩が豊かでないというイメージで考えていました。実際はそうではなく、その絵が例外なのか色彩豊かな楽しい絵を沢山描いています。この本の題材になっているのは代表作の「夢」でした。この本では「夢を見た」と名付けられた知られざる同じ絵がもう一枚あり、その真贋を判定するため二人の若手キュレーターが所有者に呼ばれて真贋の判定をし、その作品についての講評を競いあい、所有者がよりすぐれた講評をした方にこの絵の後見人として「取扱い権利」を譲渡するというものです。
 キュレーターの一人は若い新進気鋭の日本人女性、もう一人はアメリカ人の若手の男性キュレーターです。この鑑定・講評のためにはこの絵にまつわるルソーを描いた7章からなる古書を毎日1章づつ読むことが義務付けられ、読み終わった後に講評します。
 当然ミステリー小説ですから、それ以外の登場人物がいろいろ動き回っており、終盤になるに従い小説の展開に関与してきます。こうした動きや、そこで蠢いている理由またこの作品が今後どのような経過をたどるのかなども面白いのですが、それ以上に二人が毎日読まされる物語の内容に心が引かれてしまいます。ルソーという画家はどのような人物だったのか、その生き様を詳しく知りたくなりました。何も考えずに読み進められるので疲れた時の清涼剤として楽しめました。