本 の 紹 介


ヒトは食べられて進化した
ドナ・ハート、サスマン共著 化学同人 2200円



 「人間とはなにか」と問われて回答を考える場合、今の私たちについてだけ考えることもできれば、人類の起源に遡って進化の過程を考慮して考える方法もあります。また旧約聖書の人類創生物語を真実として考えることもできます。歴史的な真実は何かとなると闇の中かもしれません。この本が扱う時代は人類草創期において人類の進化の原因はどこにあったかという問題を扱っています。化石資料と現在の霊長類が捕食されている状況を通じて書名通りの仮説を提出しています。人類の起源から物事を考えていくと現在の生物界で人間がどのようなところにいるのかを考えさせられてしまいます。
 霊長類の中の人間として生物界に君臨することになる能力を獲得した過程を「人類の直立歩行も言葉も、霊長類全般が備えている防御システムから発展した。ともに、捕食によって刺激され、捕食に対処できるように発展した特性なのだ。体の大きさ、複数の雄を含む集団生活、コミュニケーション、二足歩行、複雑な威嚇行動、認知能力といった初期ヒト科が備えていた「一式」は捕食に対する警戒のもとに生まれ、捕食によって磨きがかけられたといっていいかもしれない。」(P225)と。人類の草創期には従来考えられていた道具を使って狩猟生活を送っていたというのは誤りで他の生物のエサとならないため戦々恐々としていたという立場にたっています。そのため他の生き物たちのエサとなっていた証拠を詳細に紹介しています。
 数百万年もこうした時代が続き、道具を使って立場を逆転させたというのは極々最近のことにすぎません。しかし、現在でも人間が他の動物や猛禽類の狩の対象になっていることも実例を挙げて説明しています。多くの動物の食事メニューから外れ、逆に捕食者としてすべての生物を自分の食事メニューに挙げている人間の行く末は以前ここで紹介した「捕食者なき世界」と同じ問題が起こるのでしょうか。それよりも猿の惑星の方が早いかもしれません。将来のことよりも、今、自分が捕食対象として狙われていないかと考えてみるのもいいかもしれません。図々しさを増してきているカラスのあの大きなくちばしに不気味さを感じませんか。知らないところで同じようなことが進行しているかも知れませんし・・。